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■82 / 12階層)  "紅い魔鋼"――◇八話◆前
□投稿者/ サム -(2004/11/27(Sat) 22:06:51)
    2004/11/27(Sat) 22:13:28 編集(投稿者)

     ◇ 第八話 前編『朝の光景』 ◆


    誰かに揺すり起された。
    がんがん響くような頭痛と最悪の気分。
    一瞬自分が誰だかわからなくなったような錯覚に陥った。

    ――意識制御(リセット)

    無理やり意識を覚醒させる。
    名前――わたくしはウィリティア・スタインバーグ。魔法科に所属する学院の生徒――今はそれで十分。

    十分に落ち着いてから自分を起した男に目をやった。


    「…おい,大丈夫か? これでも飲んどいた方が良い」

    渡されたペットボトル(ミネラルウォーター)を受取り,しかし自分は呆けたようにそれを見詰めている。

    朝日。
    寝心地の悪かったベットの上。断続的に頭を襲う鈍い頭痛。気分も悪い。

    「あぁ,開け方がわかんねーとか?」

    そう言う彼――記憶を辿ると,ケイン・アーノルドと聞いた覚えがある――の顔色も余り良くない。
    自分と大体似たような状況みたいだ。

    「…バカにしないでください,開け方くらい判っています…」

    一言話すにも多大な労力を必要とする。頭イタイ。
    パキッという音と共にペットボトルの蓋を開けた。
    冷えている水を飲むと,すっと頭に染み入る感じがする。ちょっとは頭痛も和らいだだろうか…でも,まだまだ本調子には程遠い。大体にして――

    「貴方。なんでこの部屋に居るんですの?」
    「あぁ…? 俺の部屋だからにきまってるじゃねーか」

    (ケイン)が億劫そうに応える。
    なるほど。ここは彼の部屋で,だからここに彼が居る事は全く問題無い。

    …うん、確かに道理ですわね。

    ぼーっと冴えない頭で彼を見る。
    白いシャツに履きこんだジーパン。シャツから覗くはだけた胸が,こう,なんとも男らしい感じが――

    いえ,まって。何かがおかしい気がします。なにが…?

    端と気づいてウィリティア(彼女)は辺りを見まわす。
    見覚えの無い部屋だ。

    「…ここはどこですの…?」

    彼がガックリと肩を落とした。
    はぁーーーーと長い溜息をついた後,のそのそと動き始める。
    おぼえてねーのか。まぁそれはそれで構わないんだが…などとぶつぶつ呟きながら答えた。

    「ここは学院寮の俺の部屋。あんたが寝てるベッドは俺のベッド。ついでに言うならその水も俺のだ」

    言葉が少しずつ頭に入る。
    寮。部屋。ベッド。水。

    あぁ――

    「昨晩,街で飲んでいたのでしたわね…」
    「おぉ,お定まりのベタなネタには落ちなかったか」

    何を言っているのか判らない。きっぱりと無視してあげるのが最良な気がした。

    「でも,なんで男性の貴方が私を介抱したんですか? ロマさんに任せるのが筋じゃなくて?」
    「あー。アイツ、あれからハルを引き摺って2次会コースだったからなぁ…」

    頭を抱えた。彼女はあれ以上飲むというのだろうか。正直信じられない。

    「まぁ,時間外に寮の外で遊べる機会なんて殆ど無いからな…それにロマは酒豪みたいだし。気晴らしだろうよ」

    付き合わされたハルは気の毒だな,とケインが苦笑する。
    いろんな意味で頭痛が収まらない。…さて,どうしましょう。

    と,彼が備え付けの机の中から薬を取り出した。2,3粒取り出して飲み,瓶ごとこちらに放ってくる。

    「頭痛薬。それも飲んどいた方が良い」
    「…助かります」

    同じように3錠ほど取り出して,先程受け取った水と一緒に飲みこんだ。

    「俺,コレから寮の朝礼あるんだが…あんたはどうする?」
    「頭痛が収まるまで休ませていただきますわ」
    「そうか。そんならそうしてくれ,なるべく誰にも見つからんように気をつけてくれれば構わない。」
    「…そうですわね。」

    男子寮の部屋に女子が入りこんでいる…なんて事が周囲に知れたら。
    まぁ余り気分の良くはない噂やら話があちこちで聞ける現象が起こるだろう。
    ――出来の悪い駆動式のように。

    魔法科ならではの思考に浸りながら答える。

    「寮から人の気配が無くなったら,その隙に出る事にします」
    「わかった。また後でな」

    がちゃり,とドアを開けて彼は出ていった。
    何ともあっさりした人だと不思議に思う。
    ちょっと周りを見渡すと,部屋の隅に毛布の塊が落ちている。まるで誰かがそこで寝ていたような,そんな感じの――

    ――あぁ。
    彼はぶっきらぼうで言葉遣いも悪いけれど…

    「…紳士ですのね。」

    酷く新鮮な気持ちが,心の中に芽生えた。


     ▽


    朝日がまぶしい。
    相変わらず頭痛はあるが,起きた当初ほどではない。

    窓の外では朝礼が始まったらしい。
    ちょっと覗いてみると頭を押さえる男子が二人,すぐ見て取れた。
    昨日同じ研究班となったケイン・アーノルドとハル・ルージスタ。
    女子寮の魔鋼技科の女生徒の一番先頭に立っているのはロマ・ルクニーア。
    彼女だけは昨日見たときと何ら変わっているようには見えない。不思議だ。

    少しの間その光景を見つづけ,ふと我に返る。

    「あ,そろそろ行かないと――」

    朝礼は然程長いものではないと思われる。
    ほぼ全員が外に出払っている今が,抜け出すチャンスだ。
    上着がハンガーに掛けられている事に気づき,それを手に取る。
    …ちょっと自分の着衣に異変が無いか見まわしたが,おかしいところは何処もない。
    この部屋の主は,酔い潰れた自分に何もおかしいことをしなかった,と確信する。

    頭はいたい。
    でも,気分はずいぶんと良い。

    だからだろうか。
    御礼とばかりに少し部屋を整頓し,一言書きつけた。それを先程渡された瓶を重石代わりにして机に置く。

    窓も開けておきましょう。外は風が気持ち良さそうですし――
    静かに窓を開け,さっと窓を離れた。これで良い。

    そうして彼女――ウィリティア・スタインバーグは部屋を抜け出す前に一言,普段は絶対に言わない言葉をもう一度贈った。


    「――ありがとう」


    その顔も,自然と微笑んでいた。



     ▲


    頭が痛い。
    然程離れていないところに立っているハルのやつも,俺と同様に頭を押さえている。
    顔色も幾分――というか完全に青い。
    何があったのかというと,まぁ察しの通り。
    昨夜は久しぶりの酒宴だったのだ。


     ▽  ▽


    昨日午後,俺達四人――魔鋼技科の俺,ハル,ロマ。そして魔法科のウィリティア・スタインバーグは魔鋼技科研究棟の教室に呼び出された。
    内容に関しては,事前に学院の古株であるエディット教授から受けていた。

    四人での共同研究。
    それぞれ長所の違った才能を持った四人で,一機の魔法駆動機関(ドライブエンジン)を1から創り上げろと言う無茶な課題だった。
    彼,エディット教授は俺達ならばそれは可能だ,と確信しているらしい。
    そんな言葉に乗せられたわけでもないが,来年以降も同様の研究をするらしいし,自分の実力を測るにも持って来いだと思ったのも事実だ。

    俺――ケイン・アーノルドはこの話を受ける事にした。
    他の3人も事前に説明を受けた時点でこの話を受ける事にはしていたらしい。
    かくして,四人一組の特別研究班が結成されたわけだ。

    が。

    話はここでは終わらなかった。

     ▼

    その後ウィリティア・スタインバーグの自己紹介と今後の大まかな予定を立てた。
    特別に決めなければならない事は,実は余り無かった。全て俺達に一任するとの事。
    ここまで煽って放任主義と言うのはかなりズルイ気もしたが,まぁ好きにやらせてもらう事にしよう。
    打ち合わせも終わり,解散となる直前。

    ハルが突然挙手した。


    「教授,一つ提案があります」


    なんだね? という教授の言葉に応える様にヤツは立ちあがった。
    目がキラキラしているときのコイツは――何かをたくらんでいると言う証拠だ。
    隣りのロマもそれに気づいたらしく,何を言い出すのだろう?と言う顔だ。

    「僕達はそれぞれ特殊な技能・才能を併せ持つ一つのグループとなったわけですが…この先起るであろう様々なトラブルに迅速に対応・対処するためにはチームワークが重要になると思います。」

    確かにそれはそうだ。
    御互いが御互いを信用していなければ作業ははかどらない。

    「僕とケイン・アーノルド,そしてロマ・ルクニーアは同じ魔鋼技科。御互いを良く知る学友でありますが――」

    ハルは少し離れた所に座るウィリティアに視線を移し,すぐに教授にもどした。
    …何を言いたいのか読めた。心眼だ。

    「彼女,魔法科の主席であるウィリティア・スタインバーグ嬢とは余り接点がありません。そこで――」

    有無を言わさず畳み掛ける調子でハルは提案する。
    お前,演説家になった方が良くないか?

    「研究班の結成式と彼女との親睦会を行うために,街への外出許可を頂きたいのですが――いかがでしょうか?」




    時間外行動許可はあっさり下りた。
    社交辞令で教授も宴に招いたのだが,彼はあっさりと辞退し帰っていった。

    かくして――俺達は久しぶりの外出と相成るわけだ。

    渋るウィリティアを連れまわしながら居酒屋を数件梯子し,夜も遅くになり始めるような時間帯。
    俺も結構酔っていたし,ウィリティアは安酒が合わなかったのだろうか――俺以上に足元がおぼつかいていない。
    一番飲んでいる筈なのに何故か素面(しらふ)なロマと程良く酔っているらしいハルを見ながら,俺は「そろそろ帰る」と告げた。

    「えー,もっと飲もうぜ?」
    「明日も講義はある,おれは寝る。」
    「そか。まぁ無理はいわんよ。」
    「悪いな。ロマは?」

    ハルはあっさりと了承し、俺はロマに聞いた。
    少し考えた彼女は んーと唸りながら,

    「キミがもう少しお酒に強ければ強引にでも連れてく所だけど…私はもう少し飲んでから帰る事にするわ。――ハル君?エスコートよろしくね」

    いささか不穏な発言を聞いた気がしたが,矛先自体はハルを向いていたようだ。ならば聞かなかった事にしよう。
    ひく,と口元を引きつらせて,ハルは強張った笑みを見せている。
    先程まわった数件の飲み屋で把握したロマの酒事情は結構やばい。彼女はうわばみだ。

    「…あー。俺も明日の講座の準備「まさか帰るとは言わないわよね,ハル君?」

    有無を言わせない笑顔。はっきりって怖い。
    ここは撤退としよう。

    「んじゃ,俺は先に帰る。じゃぁ明日な――」「まって。」

    去ろうとした俺を止めたのはロマ。
    先程のヤバイ笑顔ではない,今度は苦笑だろうか。

    「ん? なんだ」
    「ウィリティアさんの事。――どうします?」
    「…う〜…」

    ハタと足を止める。すっかり忘れていた。
    ウィリティアはロマに寄りかかるようにしてダウン中だった。

    「…ダメね。結構弱いんだ,ウィリティアさん。」

    …お前が異常なのもあるんだが。と心の中で溜息をつくと、似たような表情のハルと視線が合う。
    ――苦笑。

    「んじゃ,俺が連れてくか。女子寮に行けば誰か居るだろう」
    「あぁ、ウィリティアさんは寮生じゃないわ」

    なんと。

    「自宅からか?」
    「いえ,リディル(ここ)に作った別邸から通ってるって聞いた事があるわ。」

    …金持ちか。そう言えば,スタインバーグは貴族名だったような。

    「じゃぁどうする?」
    「女子寮に空き部屋が1箇所あったはず。そこなら大丈夫だったと思うけど」
    「…あぁ」

    ミコトの相方が居た部屋か。
    するとミコトを呼び出せば良いわけだな。なら話は簡単だ。

    「判った。何とかなると思う」
    「よかった。…じゃぁ,ハル君?」

    行きましょう,と極上の笑みで彼を見る。
    対するハルはやや蒼くなりつつある。…がんばれ。

    「…ぐ,やはり行くのでありますか?」
    「割り勘にしといてあげるから。」

    だのと話ながらすたすたと二人は去っていった。
    割り勘て…明らかにロマの飲む量が多い気がするが――
    まぁ良いか。俺には関係無い。


    ――さて。

    「おい,ウィリティア? だいじょうぶか?」
    「…あたま,イタイですわ…」

    意識が半分飛んでいる。
    ダメだなこれは。

    「おい,掴まれ。寮までつれってやるから」
    「…う〜…」


     ▼


    繁華街から郊外の学院までは思いの他時間がかかった。
    着いたのは結構夜中で既に寮の玄関も閉じている。

    IDは自分の寮の物しかない。
    一縷の望みをかけて女子寮のインターフォンでミコトにコールしたがでない。

    アイツはたまに学院に居ない事がある。
    何をしているのかは判らないが,結構危ない橋を渡ったりする事があると,風の噂で聞いた事もある。
    もっとも、事の真偽は定かじゃない。

    …だが。
    アイツの性格は俺は良く知っている。
    変な店に出入りするようなやつじゃないし,自分の事以外には余り関心を持たないやつでもある。
    動くとしたら自分の目的に沿っているか,そうでないかが判断基準なヤツだ。

    ――今夜アイツが部屋に居ないと言う事は,なにか厄介な事か何かで飛びまわっているのだろうか――?


    「…う〜」

    ウィリティアの呻きではっと我に帰った。
    そうだ、コイツをどうにかしなければ…


    「とは言っても…女子に知り合いはいねーしな…」

    交友関係は狭い俺だ,誰とでも関わりは薄いし,繋がりがあるといったらミコト,ハル,ロマの物好き達くらいだ。
    その3人は全員助けにならないときた。
    溜息を一つついて俺は決めた。

    「何で,こうなるかな…」

    夜も深くなってきた。
    このままウィリティアを放置するわけにも行かないと言う事は――

    「俺の部屋に連れてくしかないのか…」


    そう言う事だった。


     ▽▽


    朝礼も終わり,解散となる。
    これは寮の運営委員会が自主的におこなっているのだが…なんとも面倒だ。
    だが規則で制限されていてサボるわけにもいかない。
    サボればそれだけ寮で生活する際に制約が大きくなる。ペナルティがつくからだ。

    集団で生活する際には必ず規則が作られる。
    これは当たり前の事だ。
    まとまりに欠ける集団ほど厄介なものはない。
    だから運営委員会があるのは俺は当然の事として受けとめているし,そう言った仕事を自分で引きうけ実行する彼等を俺は結構スゴイと思っている。
    俺は自分からはまず関わらない方の人種だからだ。


     ▽


    一度部屋に戻った。
    一講座目の準備をしなくてはならない。

    ウィリティアはもう部屋を出ただろう。
    もしまだ残っているようなら,少なくとも俺が住んでいる3階から人の気配が無くなるまでは出るな,と言い含めなければ。
    そんな事を考えていると,ハルがふらふらとした足取りで向こうからやってきた。

    「…よう」

    不景気な声だ。顔も真っ青だ。
    とても大丈夫なようには見えない。

    「…だいじょうぶか?」
    「大丈夫にみえるのか?」

    不機嫌な感じだ。と言うかあからさまに目の下に隈が出来てる。
    …寝てないのか。

    「何時に帰ってきた?」
    「日が昇ってから。それまで延々と飲まされそうになった…」

    微かに視線を下げつつハルは呟く。
    よほど恐ろしい目にあったに違いない。自分で企画したとはいえ…憐れだ。

    「薬飲むか?」
    「くれ。」

    何時もは無駄に多い口数が少ない…よほど重症なようだ。
    別に部屋で休んでてもいいんじゃないか? と思わないでもなかったが,気分が悪すぎて眠れないと言う事もありうる。
    いっそ気絶した方が幸せなのかもしれないな。

    とりあえず,廊下で待つように言う。
    ハルは頷くとそのままズルズルとその場に座り込みやがった。

    「おいおい,休んだ方が良いんじゃないか?」
    「…ん、午前は寝る…。なんでロマはあんなに元気なんだろう…?」

    俺より全然飲んでたのに…とぶつぶつ呟き始めた。…トラウマ(精神的外傷)か。可哀想に。
    まぁハルを見てる場合じゃない。部屋に戻って薬を探そう。少しでも楽にしてやらねば。…これ以上は見るに耐えん。俺が。
    薬は先程ウィリティアに渡したから,確かベッドの辺りにあるはずだ。
    そう思って扉を開けるた。


    風に揺れるカーテンが目に入る。

    …あれ、確か窓は閉めてたはずだが。

    次いで気づく。
    ベッド周りがきちんと整頓され,俺が床で寝てた時に使った毛布も畳まれていた。
    机の上には一枚の手紙。飛ばされないように薬の瓶で押さえられている。
    開いてみると――

      ありがとう

    綺麗な筆跡で書かれたその一言は,気持ちを伝えるには十分な効果をもっていた。
    苦笑する。

    気を取りなおして薬を手に取り,廊下へ戻ろうと振りかえると――
    ヤツが立っていた。ハルが。

    ニヤけた顔。
    どうでもいいが青ざめながら笑うな気持ち悪い。

    「ふ。」

    なんだ、ふ、とは。

    「やるねぃケインくん。あぁ言うな! 言わずとも判ってる,わかっているぞぉケインくん!」

    どうでも良いけど薬はいらんのか。いらないんだな。

    「ちっとも興味がない面してたが仮面だったとはな。俺にも見破れなかったぞ…見なおした!」
    「…あのな。」

    俺は頭を押さえて唸る。
    どうしてコイツはこの手の方向へ持っていこうとするのか。
    真っ青なのにしたり顔で頷き「全てはこの部屋の小奇麗さが語っているのだ」だのと納得するハルはかなり――危険人物に見える。

    「まぁ二人とも酔っていたと言う状況だ,不可抗力的な勢いもあったのかもしれないが――」

    ハルの演説が再開するが…そろそろ位置講座目が始まる。
    薬を渡す時間くらいなら残っていたが,コイツの熱弁に付き合う暇は無い。
    とりあえず状況を説明しておこう。
    ――無駄かもしれないが。

    「女子寮は閉まってたし,昨夜ミコトが居なかったからここに寝せるしかなかったんだが。」
    「――そう言う出会いもまたありだ。まぁお前はわからんかもしれないが…コレからが正念場だ,死なないように――」

    聞きゃしねぇ。
    しょうがない。
    薬はいらないみたいだが,特別に一番即効性のヤツを進呈しよう。

    俺は1歩右足を後ろに引いて――

    「寝てろ」

    勢いを乗せて,右腕を一閃させた。


     ▽  △


    衛生部に連絡してハルを学院の医務室に運んでもらった。
    少し時間がかかってしまったがこの程度の遅れならばまぁ大目に見てもらえるだろう。

    俺はハルの事は頭から綺麗さっぱり忘れて、歩き去った。



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