Release 0シルフェニアRiverside Hole

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■432 / 3階層)  フェイス1ロキ2
□投稿者/ パース -(2006/10/13(Fri) 20:13:42)
    「・・・・・・・・・はっ!?」


    陽は閑静な住宅街の真ん中で目を覚ました。


    「・・・・・・・・・?」


    自分の体に触れてみるがどこにも異常は見あたらない。
    ゲイレルルに突き刺された胸にはまったく傷跡がなかった。


    (あれは・・・・・・・・・夢だったのか?)
    (つーか、ここは・・・・・・・・いつもの通りか)


    周りを見渡すとあの剣を引き抜いた場所から、ほんの少し移動しただけの、ほとんど同じ場所に陽は座り込んでいた。


    (あれは・・・・・・・・白昼夢だったのか?それにしては嫌に生々しかったが・・・・・・・)


    そして気付く、


    (ってか、あの剣はどこに行った?・・・・・・・ってあれも白昼夢の一部だったのか?)


    わけがわからない、が、全部夢だったのだろう。
    そう思い切ることにして陽は歩き出そうとして、もう一つ気がついた。


    (なんだ?何でこんなに音がしないんだ?)


    そこは閑静な住宅街といえども、少なくとも人が住んでいる場所である、それならば普通何かしらの物音がしているはずなのだが、今回に限って言えば、なんの物音もしなかった。


    (・・・・・・・・・・・まぁ、そんなこともあるだろう)


    このとき、陽はそれほど深く考えたりせずに歩き出した、深く考えるべきだったのに。










    これは異常だ。


    陽がそう気付いたのは閑静な住宅街を抜け、にぎわいのあるはずの商店街まで来たときのことだった。
    たしかに、そこにはたくさんの人々が、サラリーマンや買い物帰りの主婦、八百屋のおっさんに走り回る子供達がにぎわっていたが、いるはずなのに、


    まったく、物音一つ聞こえてこなかった。


    「・・・・・・・・はは・・・・・・・・なんだこれ?」


    目の前を、一人の若者が通り過ぎていく、そしてその青年は、まるで陽の事が見えていないかのように通り過ぎ、陽の体の中を通過していった。


    「これじゃ・・・・・・・・・まるで、俺が幽霊にでもなっちまったみたいじゃんか・・・・・・」


    OL風の女性、くたびれた服装の老人、スカートの短い女子高生、誰も彼もが路上に座り込む陽のことなど気にもせずに通り過ぎていく。


    「ちくしょう、何が、一体何がどうなってやがる・・・・・・・・・!」


    そこで陽は、意識を失う直前、あの異空間の中で出会ったヴァルキリーに言われた言葉を思い出す。


    『貴様はこれより我等が『ユグドラシルワールド』でエインヘリヤルとなるための戦へと参加するのだ』


    たしか、そう言われた、それから、


    『そこでは貴様と同じように神具に選ばれし者達がエインヘリヤルとなるため戦い続けておる、貴様もそこで殺し合え』


    とも言われたはずだ。


    「エインヘリヤル・・・・・・・・・・・なんのことだ・・・・・・・・それに神具だと・・・・・・?」


    あのヴァルキリーは陽が手にした剣を指して、


    『その剣は神剣レヴァンテイン、なかなかの高等神具じゃないか』


    「神剣レヴァンテイン・・・・・・・・・それが神具だというのか・・・・・・・・?」


    しかしその剣はいま陽の手にはない、意識を失っている間、どこかに落としてしまったのだろうか。


    「くそっ・・・・・・・情報が足りない、だがこの空間の中にも他に誰かいるはずだ、とにかく誰かを捜そう・・・・・・・・」


    陽はどこへともなく歩き出した。










    「誰もいない・・・・・・・・・」


    商店街を抜け、もう一度閑静な住宅街に戻り、今度は銀行などのオフィスや大手企業のビルが建ち並ぶ高層ビル街に出て、さらに歩いてゆく。
    その間、陽はたったの一人もこちら側の人間に出会わなかった。


    「本当に、誰かいるのか・・・・・・・?もしかして誰もいないんじゃないのか?」
    「だめだ、そんな事を考えたら気が狂っちまう、今は前向きに考えよう・・・・・」


    必ず誰かがいる、そう考えることにしてさらに歩みを進める。
    そして、野球場のドーム前に来たとき陽の耳に何かが聞こえてきた。


    「・・・・・・・・・・・――――!・・・・・・・・・・・・―――ォ・・・・・・・・・・・―――――レ・・・・・・・・・」
    「!!」


    確実に何かが聞こえた、こちら側の人間がこの付近にいるらしい。
    そして、その音は確実に近くなっていった。


    「・・・・・・・・・・―――――やがれ、テメェ!・・・・・・・・・――――――待て!・・・・・・・・・・・・・・」
    「・・・・・・・・・・・・・・・・・――――イヤ!・・・・・・・・・・・・――――――誰が待つか!!」


    その声の主は複数であるようだった、そしてそれらが近づいてくるにつれて、音声も正確に、足音もよく聞こえるようになっていく。


    「待て!このガキ!」「ふざけやがって、ぶっ殺すぞ!!」
    「イヤですー!絶対に待ちませんー!」


    小さな女の子がトタトタと走っていて、さらにその後ろから二人の男が追いかけていた、ただしその手には大振りの刀が握られていたが。


    (これは、どうするべきなんだろう?)


    はっきり言って状況がよくわからない、小さな女の子が逃げていて、それを二人の男が追っているのはよくわかるのだが、どちらに声をかけるべきなんだろうか。
    陽が考え込んでいる間に、女の子が陽に気付き大声で叫んだ。


    「ちょっと、そこの、お兄ちゃん!見てないで助けて!!」
    「あ、もう一人いやがった!」「あいつもまとめて片付けるぞ!」


    なぜか、いきなり巻き込まれた、しかも後ろの男二人は完全に戦う気満々のようだ、なぜか。
    小さな女の子はトテトテと陽の横を抜けて走って行き(意外に足は速い)、そのままビル街の方へ走って行った。
    そしてその女の子の胸元には、小さな狼をかたどった人形が揺れていた。


    (あれ・・・・・・・・・・・・今のは?)


    しかし陽が女の子を見送っている間に、二人の男は陽の前に来ていた。


    「兄ちゃん、あのガキに逃げられちまったよ!どうする?」
    「海!お前がこいつの相手をしろ、俺があのガキをやってくる」
    「兄ちゃん!ロリコンだったのかい!?」
    「違うぞ!!弟よ!」


    とかなんとか、色々と騒いでいたその二人(兄弟らしい)であったが、兄の方が先ほどの小さな女の子を追ってビル街へ向かうと、ようやく静かになった。
    そして、陽と向き合っている男が陽に向かって声をかけてきた。


    「へへへ、実は初めての戦闘なんすよね、緊張します」
    「あー、ちょっと待った、その前に聞きたいことがある」
    「なんすか?」
    「戦闘とか、お前何言ってるんだ?何が目的なんだ?」


    大刀を手に持ったその男は、しばらく考えていたが、やがてニヤリと笑うと、


    「へへ、騙そうったって、そうはいかないっすよ!!」
    「いや、騙そうとかそう言うんじゃなくっ!」
    「だったらなおさら、好都合っす!!」


    そしてその男は、問答無用に斬り掛かってくるわけではなかった。


    「『結界』!!」


    男が剣を正眼に構え、大声でそう叫ぶと、陽の周囲が、あのヴァルキリーに連れて行かれたのと同じような空間に変化していく。


    「こいつは・・・・・・!?」
    「へへへ、本当に知らないんっすか?僕らにはあのヴァルキリーさんが使ってるこの変な空間を作り出す能力が、ヴァルキリーさんに斬られたとき使えるようになってるんっすよ」


    それは初耳だ、あのヴァルキリー、たしかゲイレルルという名前の奴、ほとんど何も言わないうちに問答無用で突き刺して来やがったから、何も知らない。


    「へへ、兄ちゃん、こいつマジで何も知らないみたいっす、これは楽勝っすよ!」
    「ッ!!マズい!」


    何か武器は、とそう思った瞬間。


    ―――ブンッ!


    陽の体の中から一振りの剣が現れた。


    「なんだ、やっぱり神具の使い手じゃないっすか、僕らの敵っすね、行くっすよ!!」
    「お、おい、ちょっと待て!」
    「問答無用っす!!」


    (チッ、まずいな、これで剣は手に入れたけど、どうする、やるしかないのか!?)


    陽に向かって、男が駆け出してきた。


    こうして、陽の最初の戦いが幕を開ける。
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