Release 0シルフェニアRiverside Hole

HOME HELP 新着記事 ツリー表示 スレッド表示 トピック表示 検索 過去ログ

■448 / 10階層)  フェイス1ロキ5
□投稿者/ パース -(2006/10/22(Sun) 12:04:14)
    2006/10/22(Sun) 12:04:37 編集(投稿者)

    「ご飯が出来ましたですよー?どうぞめしあがれー」


    ロアと名乗った女の子は、陽の前にカレーライスの載った皿を出す、それからスプーンと水の入ったコップを陽の前に持ってくると、ニコニコとして陽の前に座った。


    「どうぞですよー?」


    (・・・・・・・・・・・・・・・・ええと)


    どうすればいいんだろう、と、陽は思った。
    状況はいまだによくわからない、わけのわからない世界に飛ばされて、見も知りもしない相手からいきなり殺されそうになったり、同じくらいいきなりご飯を用意してもらったり、そしてそのご飯を用意してくれた相手である女の子は目の前でニコニコとしている。


    「一つ聞いていいか?」
    「なんですかー?」
    「君は、なんで俺のことを―――」
    「ロアです」
    「は?」
    「君は、じゃないです、ロアです、それ以外の呼び名はお兄ちゃんでも許しません」
    「は、はぁ・・・・・・・・・」


    それでいうと、こっちの方も「お兄ちゃん」という呼び名を許した記憶がないのだが、いったいどうしてこの子はやたらと陽に馴れ馴れしいのだろうか。


    「じゃあ、ロア、ロアはなんで俺を、その、助けてくれたんだ?」
    「?」


    ロアは小首をかしげたあと、


    「私はお兄ちゃんを助けてませんですよー?むしろ私がお兄ちゃんに助けられましたですー」
    「は?俺がいつロアを助けた?」
    「忘れちゃったんですかー?今日のお昼ぐらいです、二人のおっきなお兄ちゃん達に追いかけられてるところをお兄ちゃんは助けてくれたじゃないですか」
    「ああ、あの時の」


    陽は、街を彷徨っているとき、ドームのそばでロアと会っていたことを思い出した。


    「思い出しましたですかー?」
    「ああ、思い出したよ、だけど、あの時ロアの方は大丈夫だったのかい?」
    「大丈夫です、私逃げ足には自信があるんですよー」
    「そうか」
    「そうなんですー、ところでお兄ちゃん」
    「ん?」
    「お兄ちゃんは名前なんて言うんですか?いつまでもお兄ちゃんというのはつらいです」
    「ああ、俺の名前は陽、千里塚 陽、18だ」


    陽はロアの自己紹介の時のように名前の後に年を付けて言ってみた。


    「陽お兄ちゃんですかー、それでは陽お兄ちゃん」
    「なんだい?」
    「さっさとカレーを食べてください」
    「・・・・・・・・・・了解」


    陽はテーブルの前にある大盛りのカレーからスプーンでカレーライスの山を崩し、それを口に運ぶ。
    ロアは自分の分には手を付けず、ニコニコして陽をジーッと見ている。


    「おいしいですかー?」
    「ああ、うん、おいしいよ」


    少なくとも、レトルトのカレーなのだから不味いということはないだろう。
    それなのに、ロアの顔はパーッと明るくなり、


    「よかったです、陽お兄ちゃんに喜んで貰えましたですー」
    「とりあえず、ロアも食べたらどうだ?」
    「そうですねー、いただきますですー」


    そして、ロアがカレーを食べ始めて、陽もそれを口に運ぶ。
    陽にとっては、ほとんど味わったことのない、それどころか、生涯で始めてかも知れない平和な食事だった。










    そして、二人の食事が終わると、陽はおもむろに切り出した。


    「それで、ロア」
    「なんですかー?」
    「さっきはうやむやになってしまったけど、何でロアは俺を助けてくれるんだ?」
    「さっきも言いましたですけど、私は陽お兄ちゃんを助けてなんかいませんですよー?」
    「違う、そういう意味じゃなくて、なんであの時のあいつらみたいにいきなり攻撃を仕掛けてこなかったり、ましてや食事を用意してくれたりするんだ?」
    「ああ、そういうことですかー、じゃあちょっとフェンちゃんを呼びますですー」


    ロアは、やはりニコニコとして、胸元にある小さな狼をかたどった人形に触れる。


    「来てくださいです、『フェンリスヴォルグ』」


    瞬間、ロアの足下に一匹の、かなり大きな狼が現れた。


    (!・・・・・・・・・こいつやっぱり、神具の所持者!!)


    思わず陽は飛び退り、レヴァンテインを召喚する。
    さっきまで食事をしていたテーブルがガタンと大きく揺れる。


    「陽お兄ちゃん落ち着いてくださいー、この子はフェンちゃん、狼ですけど良い子ですよー?いきなり噛み付いたりしませんですー」


    陽はいまだに警戒を解かず、ロアと狼に対峙する。


    「じゃあなんでいままで、その狼のことをいわなかったんだ?」
    「その必要がなかったからですよー、私は陽お兄ちゃんと殺し合いたいなんて思ってませんですー」
    「だからって、そんな簡単に信用できるわけ―――」
    『ウォン!!』
    「なっ!!」


    ―――ドガシャン!!


    と、陽とロアが言い合っている最中に、いきなりその狼が暴れ出して、さっきまで食事をしていたテーブルを吹き飛ばした。


    「フェンちゃん!?何するですか!?」
    『グルルルルル・・・・・・・・・・そこのひどい臭いが気にくわなかっただけだ、狼にとって鼻は命の次に大事な物、あんなひどい臭いを出す物をそばに置かないで欲しい』


    狼が文句を言っている物、それはカレーの載っていた皿のことだった。


    「ごめんなさいですー、気がつきませんでした、でもいきなり暴れないでくださいですー陽お兄ちゃんがびっくりしてるですー」
    『それは、すまないことをした』


    それだけ言うと、狼は窓を破って、外へと勝手に出て行ってしまった。


    「ああ、もう!フェンちゃん!物を壊しちゃダメですよー!」


    ロアの声が響く中、陽は、陽の隣をすり抜け、窓を突き破っていった狼と、一瞬だけ目を合わせていた、そしてその目を見て何となく陽は、警戒すべき相手を間違っていたことに気がついた。


    (・・・・・・・・・・・・・あの狼、強い・・・・・・・・・!)


    真に警戒するべき相手は、ロアではなく、あの狼であると。










    「とにかく、あのフェンちゃんのおかげで私は『力』の使い方とか、神具の持ち主の居場所とかを知ることが出来たんですよー」


    狼が、勝手にどこかへと行ってしまった後、ロアと陽はいくらか破壊してしまった家を出て、夜の町中を歩いていた。


    「じゃあ、今もその超知覚能力は使えるのか?」
    「はいですーちょっと使ってみますですー」


    ロアはしばらく、空に向かって鼻をクンクンさせてしばらくあちこち見ていた。


    「えっと、ですね、私がわかる範囲はそれほど広くはないんです、でもわかる限りだと、この街の中には私と陽お兄ちゃんを含めて神具の所持者が6人、残っているですよー」
    「6人か・・・・・・・・・」


    その中にはあの時戦った兄弟のもう一方が含まれているのだろうか、そんなことを考えながら陽は歩いていた。


    「なぁ、ロア」
    「なんですかー?」
    「お前はあの「フェンちゃん」から話を聞いたんだよな」
    「はいですー」
    「じゃあロアもヴァルキリー、ゲイレルルって名前の奴からは何も聞いてないんだな?」
    「んーと、私があったのはヘルフィヨトルっていう人でしたですよー?でもでも、そんなにたくさんお話はしてないですー」


    どうやらヴァルキリーは複数存在するらしい、そして自分はどうやらその中でもかなり運の悪い相手に出会ってしまったらしい。
    陽はそれとは別に、もう一つ気になっていたことを聞いた。


    「ところでロア、さっきからどこに向かっているんだ?」
    「もう少しですよー」


    陽が、知らない人の家で勝手に寝泊まりするのはさすがに気が引ける、ということを言ったら、ロアがちょうどいいところを知っているとのことで、ロアに案内されてその場所を目指していた。
    しかし二人が歩いている方向は、どんどん街の中心から離れて、郊外へと向かっているような気がするのは気のせいだろうか?


    ロアはさらにどんどん進んでいき、いよいよ住宅街から離れた頃になって、ようやく立ち止まった。


    「やっと到着しましたですよー、ここなら誰もいませんし勝手に使っても誰も文句言いませんですー」


    (・・・・・・・・・・・・・・・おいおい)


    ロアが案内した場所、そこは俗に言うラブホテルだった。

記事引用 削除キー/

前の記事(元になった記事) 次の記事(この記事の返信)
←フェイス2ロキ4 /パース →フェイス2ロキ5 /パース
 
上記関連ツリー

Nomal 戦いに呼ばれし者達 / パース (06/10/11(Wed) 21:59) #427
Nomal フェイス1ロキ1 / パース (06/10/11(Wed) 22:01) #428
  └Nomal フェイス2ロキ1 / パース (06/10/12(Thu) 19:59) #430
    └Nomal フェイス1ロキ2 / パース (06/10/13(Fri) 20:13) #432
      └Nomal フェイス2ロキ2 / パース (06/10/14(Sat) 00:11) #433
        └Nomal フェイス1ロキ3 / パース (06/10/14(Sat) 19:44) #434
          └Nomal フェイス3ロキ1 / パース (06/10/14(Sat) 19:47) #435
            └Nomal フェイス2ロキ3 / パース (06/10/15(Sun) 23:03) #440
              └Nomal フェイス1ロキ4 / パース (06/10/16(Mon) 21:55) #441
                └Nomal フェイス2ロキ4 / パース (06/10/21(Sat) 19:34) #447
                  └Nomal フェイス1ロキ5 / パース (06/10/22(Sun) 12:04) #448 ←Now
                    └Nomal フェイス2ロキ5 / パース (06/10/22(Sun) 12:08) #449
                      └Nomal フェイス1ロキ6 / パース (06/10/22(Sun) 17:03) #450
                        └Nomal フェイス1、2、3ロキ / パース (06/10/23(Mon) 22:23) #454
                          └Nomal フェイス1ロキ7 / パース (06/11/05(Sun) 12:29) #480
                            └Nomal フェイス3ロキ2 / パース (06/11/09(Thu) 00:11) #486
                              └Nomal フェイス2ロキ6 / パース (06/11/09(Thu) 21:46) #487
                                └Nomal フェイス2ロキ7 / パース (06/11/10(Fri) 23:56) #489
                                  └Nomal フェイス2ロキ8 / パース (06/11/11(Sat) 21:28) #492
                                    └Nomal フェイス1ロキ8 / パース (06/11/13(Mon) 21:30) #495
                                      └Nomal フェイス1ロキ9 / パース (06/11/17(Fri) 22:07) #518
                                        └Nomal フェイス4ロキ1 / パース (06/11/17(Fri) 22:12) #519
                                          └Nomal ロキ編 決戦 / パース (06/11/25(Sat) 22:33) #538
                                            └Nomal ロキ編 幕間 / パース (06/11/25(Sat) 22:34) #539
                                              └Nomal ロキ編 The last battle / パース (06/11/25(Sat) 22:40) #540
                                                └Nomal ロキ編 それから / パース (06/11/25(Sat) 22:41) #541
                                                  └Nomal ロキ編 あとがき+いろいろ / パース (06/11/25(Sat) 22:43) #542

All 上記ツリーを一括表示 / 上記ツリーをトピック表示
 
上記の記事へ返信

Pass/

HOME HELP 新着記事 ツリー表示 スレッド表示 トピック表示 検索 過去ログ

- Child Tree -