Release 0シルフェニアRiverside Hole

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■492 / 18階層)  フェイス2ロキ8
□投稿者/ パース -(2006/11/11(Sat) 21:28:57)
    『グギャオオァァァァァァァアアアアアアアーーーーー!!!!!』


    フェンリルが再度絶叫を上げた。
    そしてフェンリルは、なぜか、影美の剣を見て、恐れおののいていた。


    『グルル・・・・・ゴフッゲフッ!ゾウカ!ソノ剣!アノ方ノ・・・・・・・・・!』


    ノドをやられでもしたのか、フェンリルの声はひどく聞きづらい。


    『急げ、トドメを刺すんじゃ!!』
    「うん!」


    影美は、右手の大曲刀を、構え、フェンリルに突き立てようとした。


    『グルル・・・・・・・・・小娘!!』
    「はい」


    しかし、その直前、フェンリルの体の前に、人間の女の子が入り込んだ。


    「―――っ!!!」
    『馬鹿者!!躊躇うな!!』


    一瞬、女の子を攻撃することを躊躇ってしまった影美、それを見たフェンリルは驚異的な跳躍で影美から距離を取った。


    『ソウカ、ソウイウ事ダッタノカ!ソレナラバ俺ガ人間如キニ追いツメラレタノモ納得ガユク、アノ方ノ剣、貴様、アノ方ノ剣ヲ持ッテイタノダナ!!』
    『影美!早くトドメを!』
    「っ!わかってるけど!!」


    影美は、しかし、フェンリルの前に立つ女の子を、斬ることが出来なかった。


    『グルルルゴプッ!ゲプッ!ガハッ・・・・・・・・クカカカカカカカカ!カカカカカ!!貴様、人間ヲ殺セナイノカ!カカ、カカカカカカ!!ソノ剣ガアノ方ノ剣デアルトワカッタ以上、ヤッテラレルカ!サラバダ、人間ヨ!』


    そういうとフェンリルは、一片の躊躇もなく影美に背を向けて逃げ出した。


    「あ、待て!!!」


    影美は、駆け出そうとしたが、


    『・・・・・・・・残念じゃが、時間切れじゃ』
    「ッ!!」


    無銘刀のその言葉と同時、影美の体にまとわりついていた影が、曲刀が、羽が、形を失い、崩れ去ってゆく。


    「・・・・・・・・・・・・あーあ、逃がしちゃった・・・・・・・・」
    『そう・・・・・・・じゃな・・・・・・・・』


    影美の呟きはひどく空しい。


    『・・・・・・・・・これも契約じゃ、お主の魂を半分だけ、いただくぞ』
    「待った、その前に、一つだけ聴かせて、あなたって何者?」
    『むぅ・・・・・・・・・!』


    それは、前々からうすうすと感じていたことだった。
    この剣は、無銘刀は、やけに何でもかんでも詳しすぎる、影美に協力的なのはわかるが、それにしてもおかしいほどに、影美が聞いたこと全てに答えていた。


    「前から気になってたんだけどさ、いつだったかヴァルキリーから話を聞いたとき、あなたは名も無き剣で大したことはないみたいな風に言われてたじゃない、なのになによ、この強さは、一体あなたは私に何を隠しているの?」
    『・・・・・・・・・・・・わしは、わしの真の名は・・・・・・』


    無銘刀が名を口にしようとした、その直前、


    「そいつの名は『魔剣ロキ』、かつて嘘吐きの神でもありまた刀鍛冶の神でもあったロキが作り上げ、いつも腰に下げていた最低最悪の神具さ」


    その声は、全く別のところから、降ってわいたように聞こえてきた。










    「え!誰!?」


    そいつは、先ほどまで誰もいなかったはずの場所に、悠然として存在していた。


    「我が名はヴァルキリーゲイレルル、『槍を持って進む者』だ」


    ヴァルキリーゲイレルル、ゲイレルルは確かに、自分で言ったとおりに長大な槍を片手に持っていた。


    「ヴァルキリーが、今さら何の用事よ?」
    「フン、用事というほどの事ではない、ただ、ヘルフィヨトルを倒しかけた者とは、どれほどの者なのか見てみたくてな・・・・・・・・・それがまさか、かの戦いの折消失したと思われていた神具の所持者だったとは・・・・・・・・・ふふふ、面白いこともあるものだ」
    「面白がってる暇が、あなたにあるわけ?」


    影美は、剣を構える。
    フェンリルとの戦いにおいてかなりのダメージを受けてしまったが、影月を発動した際に傷は幾分回復していた。


    「ふん、今回はやたらと血の気の多い輩が多いな、こちらとしては魂の回収が楽で助かることこの上ないが、しかし厄介なのはフェンリルか・・・・・・・・」
    「なにごちゃごちゃと言ってんのよ!!」


    影美はゲイレルルに向かって駆け出す。


    「あんたたちヴァルキリーさえ倒せば、このわけのわかんない戦いも終わるわ!」


    影美の剣が、ゲイレルルを斬り裂く寸前、


    「ふん、無駄なことを・・・・・・・・・」


    ―――ゲイレルルの姿がかき消えた。


    「えっ!?」
    「ここだ」


    声は、影美の真後ろから。
    影美が振り返った瞬間、その体を槍で強く打ち据えられ、吹き飛ばされる。


    「がっ!!」


    しかし次の瞬間、吹き飛んだその先に、ゲイレルルが出現し、またしても槍で強く打ち据えられる。


    「がはっ!げほっ!!」


    影美は、地面を転がりながら状況を把握しようとするが、それよりも早くゲイレルルによる一撃を喰らい吹き飛ばされる。


    (なっ、一体何が!?)
    『超高速移動、単純にそれだけじゃ、奴は目にも止まらぬほどのスピードで移動しておる』


    影美は、地面を転がりながら、起きあがろうとする、しかしその背中をゲイレルルによって踏みつけられた。


    「ぐっ・・・・・・・・・・うう・・・・・・・・・・・・・・・」
    「舐めるなよ、人間風情が、ヘルフィヨトルを追いつめたからといって、貴様如きが他のヴァルキリーに勝てるなどと思い上がりもはなはだしい」


    剣で反撃しようと試みるも、その腕をゲイレルルによって踏みつけられる。


    「ヘルフィヨトルは所詮我等ヴァルキリー最弱、その上奴は戦いが専門ではない、我のような戦闘専門の上位ヴァルキリーからすれば、貴様等の反抗など塵芥に等しいのだ」


    ゲイレルルは槍を影美の背中に当てる。


    「もし我に勝てる者がいるとすれば・・・・・・・・・・それは我によく似た力を持つ者だけだ、あるいはレーヴァテインの所持者のようにな」


    ゲイレルルの言葉はどこまでも冷ややかだ。


    「貴様をこの場で殺すことはたやすい、だがそんなことをすれば戦士の魂を回収することが出来なくなる、戦士の魂とは、戦場で戦いの中勇敢に死んだ物のことをこそ指すのだからな、それゆえに、貴様には「罰」を与えるとしよう」
    「な、なによ?なにするつもりよ!?」


    影美は、もぞもぞと動こうとしたが、無駄だった。


    「「魂」を、半分ほどもらうことにする」


    影美は、ただ思った。


    (またですかーーーーー!?)










    黒い剣、『魔剣ロキ』は静かに呟いた。


    『ハァ・・・・・・・・・・どうしたものか・・・・・・・・・・』


    ゲイレルルは今、影美の魂を半分奪いさろうとしている。
    そして自分は今、同じように影美の魂を半分、奪うことが出来る。


    このままで行けば、影美の魂はとても小さくなってしまう。
    戦いに生き残ることなど、到底不可能になるほどに。
    そして契約により、影美の魂を半分取らなければ、今度は自分自身が破壊される。


    ゲイレルルが、槍を構えた。


    『考えている、時間はない・・・・・・・・・・か』


    手段を選んでいる、暇はなかった。










    「貴様の魂の半分は、我が頂く、人質といったところだ、返して欲しければ、残る一人、我に近しい能力を持つ者、『神具レーヴァテイン』の所持者を倒せ、そうすれば返してやらんでもない」
    「残り、一人・・・・・・・・・・?」
    「ああ、どうやらフェンリルは滅んだらしい、貴様に罰を与えた後、そちらに向かうとしよう」


    ゲイレルルは、槍を振り上げ、影美に向けて、振り下ろそうと――――


    『契約施行、魂の半分を神具の中へ』
    (!!?)


    何かが、影美の中の大事な何かが失われていった。


    (え・・・・・・・・・・無銘刀、なに・・・・・・・・を・・・・・・・・・・・・・・・?)
    『強制還元、空いたスペースに我を遷せ』
    (う・・・・・・うぁ・・・・・・・・・・・・・・・・)


    直後、何かが、影美の体内に入り込んできた。
    それが、影美の体を包んだような気がして、


    「それでは、いくぞ」


    ゲイレルルが槍を突き下ろした。
    槍は影美の体に突き刺さり、何かを、またしても引きづりだそうとしていった。
    しかし、影美の体を包んだ何かが、それの身代わりとなって、影美の外に出て行った。


    (なに・・・・・・・・・が・・・・・・・・・・?)


    ゲイレルルが槍を引き抜いた。


    「・・・・・・・・?何だ・・・・・・・・・・・・?」


    ゲイレルルは首をかしげていた。


    「まぁよい、確かに半分、いただいたぞ、それではな」


    ゲイレルルが立ち去ろうとしていた。
    影美はそれに手を伸ばす。


    ―――自分は、自分自身からは何も取られていない。


    それがわかった、だから手を伸ばした。
    しかし、その手は、何も掴むことはなく、ただ地に落ち。


    「う・・・・・・・・・・・ぁ・・・・・・・・・・・・・・・・」


    影美は意識を失った。
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