Release 0シルフェニアRiverside Hole

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■519 / 21階層)  フェイス4ロキ1
□投稿者/ パース -(2006/11/17(Fri) 22:12:45)
    2006/11/17(Fri) 22:15:32 編集(投稿者)
    2006/11/17(Fri) 22:13:07 編集(投稿者)

    そこは、どことも知れぬ場所、まさしく異空間と呼ぶべき場所。
    そこには、現在、二つの存在が、あった。


    「おかえりなさい、ゲイレルル、首尾はどうでした?」
    「上々だな、神具を持つ者同士の戦いにより、多くの魂が我々の物となるだろう」


    その二人とは、この街に存在する二つのヴァルキリー、ゲイレルル、ヘルフィヨトルであった。
    ゲイレルルは、人間世界でやることをほぼ終え、そこ、「神々の世界に最も近い場所」へと戻ってきたところだった。
    そして、戻ってきたゲイレルルを見て、ヘルフィヨトルは口を開いた。


    「・・・・・・・・・・・・私は、あまりこの方法に賛成できませんが」
    「なぜだ?神具をばらまく事によって強力な魂を簡単に判別し、それらを戦わせることにより戦士の魂とする、これほど確実で簡単で労力のいらぬ方法はないのではないか?」


    それは、最後の決戦が始まるより、わずかに前のこと。
    もう間もなく、殺し合いを始める陽と影美が、まだ出会っていない時分。


    「しかし、その戦いにより多くの無関係の者達までが巻き込まれて死んでいます、これはあまりにも無駄が多すぎます」
    「なに?ああ、先ほどのフェンリルのことを言っているのか」


    ゲイレルルは、ヘルフィヨトルを小馬鹿そうに笑ったあと、言った。


    「そんな物、我等がヴァルハラへ持ち帰る魂が増えるだけのこと、喜ぶべき事であろう?」
    「そんな物って・・・・・・・・・・・・・・!?」
    「そんな物だろう、人間など、我等からすれば人間にとっての蟻のような物、その中でも神具すら持てぬ小さな魂のことなど気にする必要あるまい?」
    「しかし・・・・・・・・・・・・」


    もうよい、とゲイレルルが手で制した。
    ヘルフィヨトルはまだなにか言いたそうだったが、しぶしぶ口を閉じた。
    ゲイレルルとヘルフィヨトルとは、位階上では差があるが、役職上では同じ上位ヴァルキリーなので、ヘルフィヨトルがゲイレルルに丁寧語を使う理由はないのだが、これがヘルフィヨトルの地の喋り方なのだった。


    「それにしても、気になることが一つある」
    「何ですか?」
    「今回戦いに投入された神具のことだよ」
    「あなたが気にしているのは『レーヴァテイン』の事ですか?」
    「それもあるが、それだけではない」
    「どういう事ですか?」
    「お前が言っていた、お前を傷つけた神具、あれは『魔剣ロキ』だった」
    「魔剣ロキ!?そんな、あれはかのラグナロクの折に消失したはずでは?」
    「いや、どうやらそうではなかったらしい、形を変えていたため、我々も気がつかなかったのであろう」


    ヘルフィヨトルは、しばらく開いた口が塞がらなかったが、気を取り直して聞いた。


    「なるほど、それならばただの神具の使い手に私があそこまで追いつめられたのもわかります・・・・・・・・・・いえ、それはいいのです、それで、気になることとは?」
    「フン、それは所詮偶然だろうさ、まぁいい、我が気にしているのはだ、なぜ、この時期になって『レーヴァテイン』、『ロキ』、そして『フェンリル』までもが目覚めたのだ?」
    「それは・・・・・・・・たしかに、今まで何千年ものあいだ、それこそラグナロクの後眠りについていたはずの高等神具が、このエリアだけで3つも解放状態になるなんて、今まででは考えられませんね」


    ゲイレルルは、口元に手を当てて考えながら言った。


    「実は、それだけではない」
    「と、言いますと?」


    軽くあごに指を付けて、考える仕草をしながらゲイレルルは続けた。


    「今回は、我々も含めて、10人の上位から中位のヴァルキリーが合わせて5ヶ所の『ユグドラシルワールド』を作るために動員されているのは知っているな?」
    「はい、それが何か?」


    ちなみに、ゲイレルルは上位ヴァルキリーの第3階位、ヘルフィヨトルは同じく上位ヴァルキリーの中では最下の第8階位である。


    「実は、話によると、それらに投入された神具の中には、かの『グングニル』や『ミョルニル』、『スキーズブラズニル』といった神具が投入されているらしいのだ」
    「なんですって!?」


    今、ゲイレルルが言った3つの神具、それは全て最高位の神具である。
    ラグナロクの折、それを使った神々により幾体もの巨人を屠ったそれらの神具は、神々が死んだ時も、破壊されることなくそのまま残されていた。


    「たしかに・・・・・・・・あなたの言葉が正しいとするなら、『グングニル』、『ミョルニル』、『スキーズブラズニル』、そして『レーヴァテイン』、『ロキ』、『フェンリスヴォルグ』、これら最高位の神具がホイホイと投入されるなんて・・・・・・・・・・」
    「だろう?一つのエリアに高位の神具が投入されるだけなら今までもあった、だが今回はどうもおかしい、同じくこれも噂なのだが、『魔剣ティルフィング』も投入されたらしい」
    「また魔剣ですか・・・・・・・・」
    「ああ、それも魔剣の中の魔剣だ、あの『グラム』や『ミストルテイン』に比べれば名は劣るが、凶悪な魔剣には間違いない、それがどこか他の場所で戦いに投入されたらしい」
    「魔剣と言えばここにも『ダインスレイブ』が来てましたね」
    「ああ、中級魔剣だな、体から血を流し続ける変わりに力を手に入れるという、まぁそこそこの魔剣だな」


    かのダインスレイブをそこそこと言ってのけるあたりゲイレルルも流石なのだが、誰も突っ込まない。


    「まぁ、フェンリルに取り込まれてしまい、フェンリルの死と共に他の3つの神具もろとも消滅してしまったようですが、これは仕方ありませんね」
    「そうだな」


    話が脱線していたので、ゲイレルルは話を戻した。


    「それはともかく、今回の戦い、やたらと高位の神具が投入されているあたり、何かおかしいと思うのだ」
    「たしかにそうですね、フレイヤ様からは何か言われてないのですか?」
    「いいや、何も聞いていない」
    「そうですか・・・・・・・・・・・」


    ゲイレルルは、真剣そのものといった顔で言った。


    「『フェンリル』の目覚め、『ロキ』の解放、それによって引き起こされた『レーヴァテイン』の封印解放・・・・・・・・・これはまるでかのラグナロクが再び起ころうとしているようではないか・・・・・・・・・・」


    二人の間に沈黙が訪れた。
    そこで、ふと、ゲイレルルが思いだしたように言った。


    「そういえば、そろそろあの二人、この街にいる最後の神具の所持者達が戦いを始めている頃だろう、そっちはどうなった?」
    「はい、ただいま」


    ヘルフィヨトルが、空間を操作する。
    すると、二人の前に、陽と、影美の対峙している姿が、映像投射機の映像のようにして映し出された。


    「いよいよだな」
    「そうですね、この戦いが終わり次第勝者以外の全ての魂をヴァルハラへ送り、我々の仕事は全て完了です」
    「ああ、そのことだが・・・・・・・・」
    「なんですか?」
    「最後の勝者も、ヴァルハラに連れて行こいと、フレイヤ様からの命令だ」
    「!?」


    ヘルフィヨトルは一瞬凍り付いた。


    「な、何のためにですか!?」
    「それは・・・・・・・・・おそらく・・・・・・いや・・・・・・・・・」


    やがてヘルフィヨトルは、何かに気付いたように目を見開いた。


    「まさか・・・・・・・・・!」
    「ああ、考えたくはないのだが、またしてもフレイヤ様のお戯れ・・・・・・・・・お遊び、そう考えれば、今回の高位神具が大量に投入されたことも理解できる・・・・・・・・・」
    「っ!では、あの二人、今戦おうとしている二人にあなたがした約束は、生き残った方に魂を返す、という約束はどうなさるおつもりですか!?」
    「それは・・・・・・・・・・」
    「ゲイレルル!あなたは、なんて残酷なことを・・・・・・・・・・・!」
    「仕方あるまい!これも全てフレイヤ様のご命令だ!!」
    「あの二人に約束をしたのはあなたでしょう・・・・・・・・・?」
    「・・・・・・もうよいっ!我はあの二人の戦いを見に行く、ヘルフィヨトル、お前は残りの魂を運ぶ準備をしておけ」
    「・・・・・・・・・・・・・・はい」


    ゲイレルルが立ち去り、ヘルフィヨトルもどこかへ消えて、そしてそこには静寂が訪れた。

    これは、最後の戦いの、そのほんのちょっと前のお話。

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