Release 0シルフェニアRiverside Hole

HOME HELP 新着記事 ツリー表示 スレッド表示 トピック表示 検索 過去ログ

■447 / 9階層)  フェイス2ロキ4
□投稿者/ パース -(2006/10/21(Sat) 19:34:26)
    『むーん、何者かは知らんが相手はずいぶん広範囲に渡って領域を広げたようじゃな』


    影美と無銘刀は、どこまでも広がっている例のわけのわからない空間にいた。


    「ねぇ、これって、ヴァルキリーが使ってた技よね、まさかまたヴァルキリーが来たの?」
    『いいや、それはあるまい、あのヴァルキリー、ヘルフィヨトルはおぬしに剣で軽い傷を付けていったからの』
    「傷?」
    『もう忘れたのか?・・・・・・・そういえばお主は気を失っておったな、肩のところじゃ』
    「えーと・・・・・・痛ツッッ!」


    影美は右肩のところに小さな傷があることに気付いた。


    「なにこれぇ?」
    『最初はもっと大きな傷じゃったんじゃがな、あのヴァルキリーが必要以外の傷は治してくれたのじゃ』
    「へ?なんで!?」
    『さぁのぅ、お主に興味を持ったのかもしれんな』
    「で?あいつが私に興味を持つのとこの傷とはなんの意味があるわけ?」
    『その傷にはヴァルキリー達の特別な力が込められていてな、その傷を付けたヴァルキリーには、その傷を付けた相手が生存しているかもしくは死んでいるか、どこにいても知ることが出来るのじゃ』


    「ふーん、それでこの傷が、この空間とどう関係するわけ?」
    『その傷にはヴァルキリーの力の一部が組み込まれておる、そのためヴァルキリー達の力であるこの領域作成能力を、傷を付けられた者は使うことが出来るのじゃ』
    「うーん、傷と空間のことはよくわかったけど、じゃあこの空間を作り出した相手はどこにいるのよ?」
    『さぁのぅ、ずいぶん広い空間だと言ったじゃろう、相手もまだ使い慣れてはおらぬようじゃ、闇雲に魂の力を浪費していると見える』
    「まーた『魂』、か」
    『そうじゃ』


    『そもそも魂とは、全ての命ある者、生命全てに宿る純粋な力のことじゃ』
    「純粋な力・・・・・・・・・」
    『そうじゃ、例えば窮地に立たされ、それでも生きようとするとき人は本来の数倍の力を出すことが出来るような、ある意味では本能に近いモノを指す言葉なのじゃ』
    「ふーん、それで?」
    『わしらのような神具、というのは持っているだけでもその魂を消費してしまう、それゆえに普通の、並大抵の魂しか持たぬ者では、ただ所持しているだけでも瞬く間に魂を吸い取られ、終いには死んでしまうのじゃ』
    「え、うそっ!!」


    直後、影美は無銘刀を虚空に向かって放り投げた。


    『こりゃ!!わしをいきなり投げ捨てるんじゃない!!!』
    「だって魂吸い取られるっていったじゃん!!」
    『このド阿呆!普通の魂しか持たぬ者の場合と言ったじゃろうが!』
    「え?」
    『そもそも、普通の魂の所持者では、わしら神具を使ったり、能力を発動したり、それどころか見ることすら出来ぬよ』
    「そうなの?」


    影美はスタスタと剣の元へと歩いていって剣を拾った。


    『そうじゃ、そしてわしらのような神具を使える者、それはつまり並の魂ではない、強靱な魂、もしくは強大な魂、それか強烈な魂を持つ者に限られるのじゃ』
    「あの、ちょっと待った、強靱とか強烈って、魂にも違いがあるの?」
    『微妙な差異ではあるがの、「強靱」な魂は自らの意志、自我がとても強い者の持つ魂じゃ、それゆえその能力はきわめて直接的、自分自身、もしくは自分の持つ武器のみに影響を与える『力』を持っていることが多い』
    「あとのふたつは?」
    『「強大」な魂はの、その大きさゆえに様々な物へ影響を与えることが出来る、応用が利きやすい能力を持つ、そして一番特殊なのは「強烈」な魂じゃ』
    「どう、特殊なの?」
    『強烈な魂は、早い話が異常者や気が狂った者といった、ちょっと変わった人間が持ちやすい、それが他に与えるインパクトが大きな魂のことを指す、この魂の所持者には対しては、たいていの場合神具の方から魂の所持者に声、というかアピールというか、まぁ、様々な方法でコンタクトを取ろうとすることが多い』


    「ふーん・・・・・・・・・・・・・・・」
    『・・・・・・・・・』


    しばらく影美は、色々なことを考えていたようが、やがて聞いた


    「じゃあさ、私の魂は・・・・・・・・・どのタイプなわけ?あんたならわかるんでしょ」


    数秒の沈黙の後、


    『お主の魂は強大にして強烈、、場全域を支配できるほどの大きさと、わしを引き寄せるほどの変わり者の魂じゃよ』
    「ふーん・・・・・・・・・それってすごいの?」
    『ああ、少なくともわしが今まで出会ってきた魂の中では、最強じゃな』
    「ふーん・・・・・・・・・」


    強さを誉められても、それほど嬉しくはなかった。


    ―――ガシャーン!


    そんな擬音が似合いそうな感じに異空間の一部が壊れ、そこから男が一人現れた。


    「ヒャハハ!やっと見つけたぜ!!神具の所持者!女か、ぶっ殺してやるぁ!!!」


    そして、戦いが始まった。










    『あやつは間違いなく「強烈」なタイプの魂の所持者じゃな、このタイプはとにかくおかしな攻撃をするから気を付けろ』
    「気を付けろって、そもそも何で戦わなきゃならないわけ?」
    『こっちのユグドラシルワールドに召喚されてしまった以上、ヴァルキリー達はこの世界の人間に対して互いに潰し合うようにしか指示を出さないじゃろう、そもそもお主のような一度ヴァルキリーを破りかけた者の前にはそう簡単に姿を現さないじゃろうな』
    「じゃあ、もう一度ヴァルキリーが出てくるまではとにかく戦い続けるしかないってこと?」
    『そうなるのぅ』
    「うわー・・・・・・・・・戦いなんていやだなぁ・・・・・・・・・・」


    と、影美が独り言を言ったところで、男がぶち切れた。


    「て、てめぇ!!チョーシぶっこいてんじゃねぇぞ!!俺をシカトしてなにわけのわかんねぇことブツブツ言ってやがんだよ!!ふざけてんじゃねぇぞコラ!!?」
    「うわー、完全に目が逝っちゃってるよ・・・・・・・・・たしかにこれは強烈だねー・・・・・・」
    『まぁな、この時代では強烈な魂の持ち主はあんな感じのと相場が決まっておる』
    「ああー・・・・・・・あんなのの相手するのはいやだなぁ・・・・・・・・」
    「ああぁ!!?あんなのとかなにいってんじゃこら!?て、てめぇ勝手なこと抜かしてっとぶっ殺すぞ!?」
    「なんかもー会話が成り立たないし、何言ってるのか聞き取りにくいし、あーもーいやだなぁ・・・・・・・・」
    『諦める事じゃな、少なくともこの場を切り抜けるためにはあやつを倒さねばならんぞ?』
    「だらぁ!、もういいっつの!てめぇがなにいってようがもう関係ねぇ!ぶっ殺してやる!!来やがれ『ハーベリングス』!!!!」


    男が神具の名前を呼んだ瞬間、男の手には一本の剣が、ただしずいぶんとおかしな形状の剣が出現していた。


    (なにあれ・・・・・・・・紐がいっぱい?)
    『気を付けろ、ただの紐ではあるまい』


    その剣は、やたらと細いくせに長い、ひょろりとした剣で、持っている男もかなりの長身のため針金が2本あるように見えた、そしてその剣からは、何本もの細い、糸状の物が伸びていた。
    そして男はその長い、変な紐と糸だらけの剣を構えると、


    「だらぁあ!いくぜぇえい!!!」


    一気に影美に向かって突撃してきた。


    『避けろ!』
    「うん!」


    影美はそれに反応して左手側に跳んでこれを回避しようとして、


    「おるぅあ!!」
    「痛ッツ!!」


    直後、影美の肌に幾本もの細い傷が出来上がった。


    「な、何!?」
    『あの細い糸じゃ!だから気を付けろといったじゃろ!』


    男の持つ剣、それから伸びる幾本もの細い糸は、その剣の本体以上の切れ味を持つ武器なのだった。


    「だっらぁあぁ!!逃がすかよぉ!!」


    男の追撃が始まる。


    「っつ!『影刃』!」


    影美の持つ剣から枝のように数本の刃が飛び出す、男はとっさに剣を盾にして後ろに跳び退る。


    「んだぁ?てめぇも俺様と同じように変化できんのかよぉ?だったら俺も一段階レベルアップしっちまうぞ!!」
    「え?」
    『どうやら、剣の形状そのものを変えるタイプの能力らしいな』


    「育て!『ハーベリングス』!!」


    男が叫んだ瞬間、男の剣から上下左右、全ての方向に数本ずつ、影美の『影刃』と同じように枝のように細く長い刃が飛び出し、それら全てにはやはり細い糸のような凶器が生えていた。


    『これは・・・・・・・・・全てを避けきるのは不可能に近いな』
    (あっさり諦めないでよ!?)
    『じゃったら、そもそも近距離での戦闘をしないことじゃな』
    「あ、そっか!」
    「おっしゃぁ!いっくぜえぇい!」


    男の攻撃が再び始まるより先に、影美は大きく後退し、『力』を発動した。


    「行け!『影兵』!」


    影美自身の影が動き出し、影の兵団を作り出す、そしてそれらは次々と男目掛けて殺到していった。


    「これでいっかな?」
    『阿呆!あやつのような相手に数で攻めても無駄じゃ!!』
    「え!?」


    無銘刀の言ったとおりだった、何体もの影の兵団は、男に斬り掛かるより速く、その長細い剣と、それから伸びる何本もの糸によってかなりの数が一撃でバラバラにされてしまった。


    「なんのつもりっだコラ!なんでいっぱい出てきやがんだよぉ!?しかもよえぇーし!なんのつもりだって聞いてんだよぉ!!?」


    そしてもう一度男が剣を振り回すと、兵団は全て消え去っていた、そして男は再度剣を構え、


    「もう一段階レベルアップしろ!!次は全力でぶっ殺してやる!」


    男の声に剣が答え、さらに長大でとんでもない数の糸を生やした剣が出来上がった。


    『まずいぞ、奴は完全に次で決着を付けるつもりじゃ、どうする?』
    「わかった、じゃあ次でケリを付けよう」


    影美は剣を正眼に構え、そして呟く、


    (私の持つ『力』、影の力を最大限に活かして・・・・・・・・・)
    「『影纏』!」


    瞬間、影美の体から霞のように黒い影が噴きだし、影美の周りを影がまとわりつき、影美の姿を男から見えなくした。


    「なんだぁ!?」


    しかしさらに次の瞬間、その影の霞を吹き飛ばしてひとつの影が男に向かって突進していく。


    「はっ!なんだ!目眩ましのつもりかよぉ!?無駄だったなぁ!!おらぅぁあ!!!」


    男の長大な剣と幾本もの細い糸は、その影と、霞をまとめて消し飛ばした。


    「ひゃは!やったぜ―――」
    「あなたが私を見るときあなたは私の影を見ない、あなたが私の影を見るときあなたは私を見ない、残念だったわね」


    瞬間、地面から、いや、倒れた影美の形をした物から伸びるほうの影から、本物の影美が出現した、それはあっというまに油断していた男との距離を詰め、


    「ごめん!」


    影美の剣は、男の両足を深々と切り裂いた。

記事引用 削除キー/

前の記事(元になった記事) 次の記事(この記事の返信)
←フェイス1ロキ4 /パース →フェイス1ロキ5 /パース
 
上記関連ツリー

Nomal 戦いに呼ばれし者達 / パース (06/10/11(Wed) 21:59) #427
Nomal フェイス1ロキ1 / パース (06/10/11(Wed) 22:01) #428
  └Nomal フェイス2ロキ1 / パース (06/10/12(Thu) 19:59) #430
    └Nomal フェイス1ロキ2 / パース (06/10/13(Fri) 20:13) #432
      └Nomal フェイス2ロキ2 / パース (06/10/14(Sat) 00:11) #433
        └Nomal フェイス1ロキ3 / パース (06/10/14(Sat) 19:44) #434
          └Nomal フェイス3ロキ1 / パース (06/10/14(Sat) 19:47) #435
            └Nomal フェイス2ロキ3 / パース (06/10/15(Sun) 23:03) #440
              └Nomal フェイス1ロキ4 / パース (06/10/16(Mon) 21:55) #441
                └Nomal フェイス2ロキ4 / パース (06/10/21(Sat) 19:34) #447 ←Now
                  └Nomal フェイス1ロキ5 / パース (06/10/22(Sun) 12:04) #448
                    └Nomal フェイス2ロキ5 / パース (06/10/22(Sun) 12:08) #449
                      └Nomal フェイス1ロキ6 / パース (06/10/22(Sun) 17:03) #450
                        └Nomal フェイス1、2、3ロキ / パース (06/10/23(Mon) 22:23) #454
                          └Nomal フェイス1ロキ7 / パース (06/11/05(Sun) 12:29) #480
                            └Nomal フェイス3ロキ2 / パース (06/11/09(Thu) 00:11) #486
                              └Nomal フェイス2ロキ6 / パース (06/11/09(Thu) 21:46) #487
                                └Nomal フェイス2ロキ7 / パース (06/11/10(Fri) 23:56) #489
                                  └Nomal フェイス2ロキ8 / パース (06/11/11(Sat) 21:28) #492
                                    └Nomal フェイス1ロキ8 / パース (06/11/13(Mon) 21:30) #495
                                      └Nomal フェイス1ロキ9 / パース (06/11/17(Fri) 22:07) #518
                                        └Nomal フェイス4ロキ1 / パース (06/11/17(Fri) 22:12) #519
                                          └Nomal ロキ編 決戦 / パース (06/11/25(Sat) 22:33) #538
                                            └Nomal ロキ編 幕間 / パース (06/11/25(Sat) 22:34) #539
                                              └Nomal ロキ編 The last battle / パース (06/11/25(Sat) 22:40) #540
                                                └Nomal ロキ編 それから / パース (06/11/25(Sat) 22:41) #541
                                                  └Nomal ロキ編 あとがき+いろいろ / パース (06/11/25(Sat) 22:43) #542

All 上記ツリーを一括表示 / 上記ツリーをトピック表示
 
上記の記事へ返信

Pass/

HOME HELP 新着記事 ツリー表示 スレッド表示 トピック表示 検索 過去ログ

- Child Tree -