Release 0シルフェニアRiverside Hole

HOME HELP 新着記事 ツリー表示 スレッド表示 トピック表示 検索 過去ログ

■495 / 19階層)  フェイス1ロキ8
□投稿者/ パース -(2006/11/13(Mon) 21:30:39)
    結局、陽が戦った女性は、死んでしまった。


    深々と斬りすぎてしまったらしい、まぁ、戦闘中に手加減できるほど陽は熟練しているわけでもないので、仕方ないが。


    (っていうか、フェンリルに魂を喰わせるって、具体的にどうすりゃいいんだ・・・・・・・・?)


    よくわからないが、わざわざ死体を運ぶのも手間なので、死体はそのままに、陽はフェンリルとロアを探すことにした。










    そして、現在陽は、その情景を見て困惑、というか理解不能、といった状態になっていた。


    街の中心地、ビル街が、まるで戦場にでもなったかのように、壊滅していた。
    そこら中、街のいたるところで建物が崩壊し、瓦礫の山を形成していた。


    (・・・・・・・・・ここで一体何があったんだ!?)


    それは、現在のフェンリルをしらない陽からしてみれば当たり前の感想だった。
    そして陽は、その原因をすぐに知ることになる。


    ―――バキバキバチバチッ!!


    謎の異音と共に巨大な狼が、空間を割って出現した。


    「なっ!!フェンリル!!?」


    その狼は、しかし陽の知っていた頃の狼ではなかった。
    体は巨大化し、爪や牙も鋭利で、目は血走っており、そして何より体中から血を流して、まさに満身創痍という状態に陽からは思えた。


    『グルル・・・・・・・魂・・・・・・・・・傷・・・・・・・・・・・・・魂・・・・・・・・アノ方ノ・・・・・・・・・・・魂・・・・・・・・ゴフッグッ・・・・・・・・・!!魂ガ・・・足リヌ・・・・・・・・・・力、ガ必要・・・・・・・・・・俺ガ人間如キニ敗レルナド・・・・・・・・・・・・アッテハナラヌコト・・・・・・・・・・・・!』


    フェンリルは、血を口から吐き出しながら、こちらを、陽を見た。


    「一体、何があったんだ!」
    『人間・・・・・・・・貴様ノ魂、俺ノタメニ使ワセテモラウゾ』
    「!?」


    そして、フェンリルの後ろから、人形と化したロアが現れたと同時、フェンリルが動いた。


    「ロア!一体どうしたん―――――!!?」
    『グルルルァァァァァアアアアアアアア!!!!!』


    フェンリルの爪と牙が、陽を襲う直前、陽は力を解放。
    目の前の爪と牙とが停止する。
    陽は数歩前に動き、そこまでいったところでで時間が動き出す。


    ―――ズドン!!


    それは、ただフェンリルが地面に着地しただけの音、それなのに地面が陥没する。
    陽は、地面を転がりながらもロアの元へ移動する。


    「ロア!一体何が起こった!?早くフェンリルを止めろ!!」
    『クカカカカカカカ!!無駄ダ、ソレハモハヤ意志ヲ持タヌ、只ノ人形ダ!!』
    「なに!?」
    『ソシテ、ソノ小娘ガ現レタコトニヨッテ、貴様ノ死ハ確定シタ!!』
    「何を言ってる!?」
    『小娘!『力』を使え!!』
    「はい、『選択』、『風刃スキンゲイル』・『風吼陣』、『選択』『魔砕剣ダインスレイブ』・『破壊咆』」


    そして、フェンリルに向かって力が、集中し始めるが、
    フェンリルが突然として咳き込んだ。


    『ゲフッ、ゴフッ!ガハッ、ァァァアアアア!オノレ、力ガ使エヌトハ!!』
    「なにが何なんだよ!!?」


    とにもかくにも、フェンリルが襲いかかってくる以上それは敵だ、陽は剣を構えた。


    『オノレェ!!ナラバ俺ノ爪ト牙ノミデ貴様ヲブチ殺スマデダ!!小娘!!』
    「はい、『選択』、『神具フェンリスヴォルグ』・『獣爪牙』」


    フェンリルの爪と牙が更に巨大化、凶暴になる。
    そして、フェンリルが地を蹴った。


    『グァァルァァァアアアアア!!!!』
    「くっ!?」


    フェンリルの攻撃は、異常なまでに速かったが、しかし完全な直線攻撃だった。


    『グルルルァァァァァアアアアアアアアアアア!!!魂ヲ、魂ヲヨコセェェエェエエエエ!!!!』
    「なんだってんだよ!いい加減にしろ!!」


    陽は、跳びかかってきたフェンリルの目の前で能力を解放、空中で止まったフェンリルに対し、剣の刃をあてる。
    そして5秒経過。


    ―――ズバシュッ!!


    『グルルルルァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!』


    フェンリルの、頬から肩口を越えて腹部まで、陽の剣が斬り裂く。


    「何のつもりだ!一体何があったんだ!?そんな単調な攻撃で俺を殺せると思うな!!!」
    『クカカカカ!単調、単調カ、ソウダッタナ・・・・・・・・・・・・人間、人間!ニンゲェェェエエエエエエエエン!!!!!』


    もはや、フェンリルは完全に暴走しているとしか思えなかった。
    陽は、比較的冷静にフェンリルの爪をかわし、反撃をしようと、


    「―――――ッツ!!!?」


    その、陽の体の前に、ロアが割り込んできた。


    「ロア!!なにを!!?」
    『クカカカカカカカカ!!!人間ハ人間ヲ殺セヌゥ、貴様ハコノ娘ヲ殺セマイ!!!!』
    「・・・・・・・・・・・・まだだ!!」


    陽は能力を解放、ロアを避けてフェンリルの前に、能力が切れた瞬間フェンリルに一撃をくれてやろうとした。
    しかし、能力が切れた瞬間、


    『小娘ェ!!!』
    「なっ!!」


    まるで、陽の動きを予想していたかのように、フェンリルが叫び、そしてロアが陽の背中に掴み掛かった。


    「止めろ!ロアッ!!」
    『俺ノ力ヲナメルナァッ!!!』
    「ぐあっ!!!」


    陽はとっさに、ロアの体ごと横に跳んだが、いくらロアの体が軽いとはいえ人一人分を抱えているのだ、ロアの体重により移動が遅れたワンテンポ、その差で陽の背中にフェンリルの爪痕が深々と刻まれた。


    『クカカカカカカカカ!マダ傷ハ浅イナ!!目ヲ閉ジ、臭イト気配ノミデ動ク俺ニハモハヤ敵ナドナイ!!!』


    見ると、フェンリルは目を完全に閉じ、全てを臭いのみに頼り動いていた。
    そして陽は、いまだロアの束縛によりうまく動けないでいた。


    「ロア!頼む!俺を見てくれ!!なんでお前と戦わなきゃなんないんだ!!!」
    「・・・・・・・・・」
    「ロアッ!」
    『無駄ダッ!!』


    ロアを、必死で説得していた陽に、フェンリルの容赦ない攻撃が始まる。
    必死に剣で受け流し、能力を使い、ギリギリで避けようともがくが、ロアは決して陽を離そうとはせず、嫌でも動きが鈍る、そしてその度に陽の体にフェンリルの爪と牙が掠め、斬り裂いていった。


    「ぐあっ!!」
    『人間ガ!!足掻クナ!サッサト俺ノタメノ食料トナレ!!!』


    そして、ついにフェンリルの爪が陽の足を捕らえた。


    「がぁっ!!!!」


    思わずばたり、と倒れ込んでしまう。
    フェンリルは獲物を追い込んだ狩人のように満足そうな笑みを浮かべながら、陽の前に足を止めた。


    『グルルルル・・・・・・・・・・・・・ヨウヤク食料ニアリツケル・・・・・・・・・・ダガソノ前ニ!』


    ―――ブンッ!!
    ―――バキッ!!


    「がはっ!ぐあっあああああああああ!!!!!」
    『確実ニ動ケナクシテオカナケレバ』


    全力で振られたフェンリルの前足が、陽の体を打ち付け、陽は数メートル吹き飛んで、コンクリの壁面に受け身を取る暇なく叩きつけられる。


    『逃ゲラレテハ、タマラナイカラナ!』


    フェンリルが、ゆっくりと陽に向かって歩いてきた。
    今度こそ間違いなく、陽にトドメを刺すために、喉を掻き切って息の根を止めるために。
    陽は、ロアを見た。
    ロアは、いまだに陽の体にくっついていた、フェンリルの命令を忠実に守り、陽がフェンリルの攻撃を受けたときすらも一度も離すことなく、そのためにロアの体もボロボロの泥まみれになっていた。


    (ロア・・・・・・・・・・・)


    なんとなく、微妙にしか動かない腕を無理矢理動かして、ロアの頭を撫でてみた。
    優しく、壊れ物を扱うときのように撫でてやる。
    ロアが、その人形のような瞳を上げて、陽のことを見た。


    『グルル・・・・・・・・ナンダ、マダ動クコトガ出来ルノカ、ナラバ今度コソ完全ニ息ノ根ヲ止メテヤル』


    フェンリルが、その巨大な爪を振り上げた。


    陽とロアは、まだ見つめ合っている。


    フェンリルの爪が、振り下ろされる直前、ロアの瞳に、光が戻った。


    「陽・・・・・・・・・お兄ちゃん・・・・・・・・・・・!」


    陽は、動くことが出来なかった。










    ―――ドクン。


    陽の持つ、レーヴァテインの中で、何かが鳴動していた。
    そのことに陽はまだ気付いていない。


    (僕は、なぜ目覚めた・・・・・・?)


    ゛それ゛は自分に問いかけた。


    (なるほど、兄者の封印が解けている・・・・・・・・・・・そして、僕の使役者が、終わりを求め、望んでいる・・・・・・・・・)


    ゛それ゛は自己分析の結果出た回答に納得した。


    (使役者が、それを望むというのなら、僕はそのために力を与えよう、世界を本来あるべき姿、『無』へと返すための力を・・・・・・・・・)










    その瞬間、ほぼ同時に、四つの事柄が起こった。


    フェンリルの爪が、陽目掛けて振り下ろされたこと。


    その爪と、陽との間に、小さな体が割り込んだこと。


    その体から、信じられないほどたくさんの血が花のように舞ったこと。


    そして、


    『君は、「力」が、世界を無に帰すだけの「力」が欲しいかい?』


    声が、聞こえたこと。



    (力を、俺に・・・・・・・・ありったけの力を!俺によこせぇええええええええ!!!!!)



    陽は、それにそう答えた。
    そして、




    ―――『炎神』全能力解放。

記事引用 削除キー/

前の記事(元になった記事) 次の記事(この記事の返信)
←フェイス2ロキ8 /パース →フェイス1ロキ9 /パース
 
上記関連ツリー

Nomal 戦いに呼ばれし者達 / パース (06/10/11(Wed) 21:59) #427
Nomal フェイス1ロキ1 / パース (06/10/11(Wed) 22:01) #428
  └Nomal フェイス2ロキ1 / パース (06/10/12(Thu) 19:59) #430
    └Nomal フェイス1ロキ2 / パース (06/10/13(Fri) 20:13) #432
      └Nomal フェイス2ロキ2 / パース (06/10/14(Sat) 00:11) #433
        └Nomal フェイス1ロキ3 / パース (06/10/14(Sat) 19:44) #434
          └Nomal フェイス3ロキ1 / パース (06/10/14(Sat) 19:47) #435
            └Nomal フェイス2ロキ3 / パース (06/10/15(Sun) 23:03) #440
              └Nomal フェイス1ロキ4 / パース (06/10/16(Mon) 21:55) #441
                └Nomal フェイス2ロキ4 / パース (06/10/21(Sat) 19:34) #447
                  └Nomal フェイス1ロキ5 / パース (06/10/22(Sun) 12:04) #448
                    └Nomal フェイス2ロキ5 / パース (06/10/22(Sun) 12:08) #449
                      └Nomal フェイス1ロキ6 / パース (06/10/22(Sun) 17:03) #450
                        └Nomal フェイス1、2、3ロキ / パース (06/10/23(Mon) 22:23) #454
                          └Nomal フェイス1ロキ7 / パース (06/11/05(Sun) 12:29) #480
                            └Nomal フェイス3ロキ2 / パース (06/11/09(Thu) 00:11) #486
                              └Nomal フェイス2ロキ6 / パース (06/11/09(Thu) 21:46) #487
                                └Nomal フェイス2ロキ7 / パース (06/11/10(Fri) 23:56) #489
                                  └Nomal フェイス2ロキ8 / パース (06/11/11(Sat) 21:28) #492
                                    └Nomal フェイス1ロキ8 / パース (06/11/13(Mon) 21:30) #495 ←Now
                                      └Nomal フェイス1ロキ9 / パース (06/11/17(Fri) 22:07) #518
                                        └Nomal フェイス4ロキ1 / パース (06/11/17(Fri) 22:12) #519
                                          └Nomal ロキ編 決戦 / パース (06/11/25(Sat) 22:33) #538
                                            └Nomal ロキ編 幕間 / パース (06/11/25(Sat) 22:34) #539
                                              └Nomal ロキ編 The last battle / パース (06/11/25(Sat) 22:40) #540
                                                └Nomal ロキ編 それから / パース (06/11/25(Sat) 22:41) #541
                                                  └Nomal ロキ編 あとがき+いろいろ / パース (06/11/25(Sat) 22:43) #542

All 上記ツリーを一括表示 / 上記ツリーをトピック表示
 
上記の記事へ返信

Pass/

HOME HELP 新着記事 ツリー表示 スレッド表示 トピック表示 検索 過去ログ

- Child Tree -