Release 0シルフェニアRiverside Hole

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■487 / 16階層)  フェイス2ロキ6
□投稿者/ パース -(2006/11/09(Thu) 21:46:43)
    また一つ、別なビルが音を立てて崩壊した。


    「なんつー無茶苦茶な戦いを・・・・・・・・」
    『周りへの配慮など初めから気にしていないのか、もしくは配慮する暇がないほどの激しい戦いを演じているのか、そのどちらかじゃろうな』


    それを見て、そちらの方向へ走りながら、影美と無銘刀はそれぞれの感想を述べる。
    影美がマンションから外へ出て、ビル街へと向かう間にも2つ、3つとビルが音を立てて崩壊していった、あそこでは今、どれほどの死闘が繰り広げられているのだろうか。


    「とにかく、これ以上の被害を出せないためにも・・・・・・・・急がなきゃ・・・・・・・・・!」
    『む・・・・・じゃが、なにゆえお主が急ぐ必要があるのじゃ?』
    「なんでって、そりゃ、無意味な被害を出したくないからよ」
    『じゃが、あそこでは今、何者かが戦いをしておるのじゃぞ、どちらが勝つにせよ、敵が減るのであればお主が喜ぶべき事ではないのか?』
    「いや、そりゃ、生き残る確率が上がるのは嬉しいけど・・・・・・・・・・・・ってそうじゃなくて!私は、ただこの戦いに無関係な人達が巻き込まれるのが嫌なだけで!」
    『むーん・・・・・・・・・・・・・そうか、まぁ所詮わしは道具じゃ、お主がそう望むのならそうすればよい』
    「なによ、妙に気になる物言いね」
    『なんでもぬよ』
    「そう・・・・・・・・・・」


    それきり無銘刀は何も言わなかった。
    その豹変ぶりが妙に気になったが、影美はそれに構わず、戦場に向けて駈けていった。


    その時、無銘刀は、影美にすら聞こえぬほどの心の奥底でこう思った。


    『今度の戦いは、ヘタをすると命を賭けることになるやもしれんな、はてさて、どうしたものかの・・・・・・・・・』


    戦場は、もはや目と鼻の先だった。










    影美と無銘刀がそこに辿り着いたとき、戦いは既に終わりを迎えていた。
    そして、その戦いの中心であっただろう場所、崩れたビルの残骸がより一層破壊し尽くされた場所に、そいつはいた。


    「何よ、これは、なによこの馬鹿でっかい狼は!!なんでこんなに街がめちゃくちゃになってるのよ!!?」


    思わず影美がそう叫んでしまうほどの、バケモノ。
    大きさは2階建てのビルにも匹敵し、その口は人間程度なら丸呑みにしてしまえるほどの大きさ、爪や牙なんかもとんでもなく大きくて、犬歯なんかは影美の腕より大きそうだった。


    まるで戦争でもあって、空爆にさらされた街中のように、あたりはクレーターやら亀裂やらが走り回りとてつもない惨状を示すそのただ中に、威風堂々と、王者のように、その狼は佇んでいた。


    『グルルルルル・・・・・・・・・神具の所持者か、くかかかか、この程度、食後のデザートにちょうど良いな!!』


    狼は、影美を見て、笑ったのだろう、犬歯をむき出しにして大声を上げた。
    始めっから、どうしようもないほどに、やる気満々だった。


    『気を付けろ、こやつは、相当危険じゃ・・・・・・・・・』
    「わかってるわよ、こいつがとんでもなくやばそうだってのは、見た目そのままでしょ」
    『いや、そうではない、それだけではないのじゃ・・・・・・・・・』
    「・・・・・・・・・・・なによ?」
    『いや・・・・・・・・・』


    どうしたのだろう、今日の無銘刀はやけに歯切れが悪い。


    『のぅ、逃げるという選択肢はないのか?何もこやつを相手に正面から戦う必要はあるまい』
    「ふざけないでよ、こんな奴を放っておいたら、街の被害がどんどん大きくなってくでしょうが!放っておけないわ」
    『むぅ・・・・・・・・・・・・』


    影美は、無銘刀との会話を中断して、狼に向き直る、狼はまだこちらに向かってくる様子はない、余裕のつもりだろうか。


    「はっ、どうしたのよ、そのでかい図体して、さっさと掛かってこないの?」
    『グルルルルルルル・・・・・・・・・・・・・・・フン、人間ごとき、今の俺様にかかればウサギほども苦労をかけずに済むのだが、それほど早死にしたいというのなら、いいだろう、こちらからゆくぞ』


    狼は、地面に足を付け、前足を大きく開き、前傾姿勢になる。


    『影美よ、どうしてもやるというのなら、最後に一つだけ、忠告じゃ、決して異空間を召喚してはならん・・・・・・・・・死ぬぞ』
    「え!?」


    今すぐにでも、異空間を開こうとしていた影美は、無銘刀のその言葉に、一瞬あっけにとられ気の抜けた声を出す、そして直後、狼が跳びかかってきた。










    「え!?・・・・・・・・・・うわっ!!」


    影美が気の抜けた声を出した瞬間、狼が跳びかかり、影美はとっさに地面を蹴って、右手に避ける。
    狼がまさに風の如く駆け抜けた直後、左肩の部分の服が、千切れ飛んだ。
    背中に冷たい汗が流れる、正直、ほとんど見えなかった。


    『あやつはフェンリル、全ての狼の王じゃ、3人いたロキの子供の一人、かつてラグナロクの折、ロキ達巨人軍の先鋒として真っ先に戦場に降り立ち、幾体もの神々を喰らい、その腹に納め、そして終いには神々の主、オーディンをも喰らった最強最悪の化け物じゃ』


    無銘刀の言葉が頭の中に響く、が、正直声を返すだけの余裕がない。
    フェンリルはゆっくりと体を回転させる、その足先、爪の一つに影美の服の切れ端が突き刺さっていた。


    『フン、避けたか、くかかかかかかか・・・・・・・・・・それなりに場数を踏んではいるようだな、それぐらいでなければ面白くない』


    フェンリルが笑った、影美は全然笑えなかった。


    (ちょっと!?神々ってほとんど滅んだんじゃなかったの!?何でそんなバケモンがいるのよ!!?)
    『確かに、フェンリル自身は滅んだ、オーディンを喰い殺した後、その息子のヴィーザルによって心臓を突き刺されてな、だがその息子、さらにそのまた息子、フェンリルの一族全てが滅んだわけではない、あやつは間違いなく、フェンリルの血筋じゃよ、それの内の一体が神具に封じ込められていたんじゃろうな』
    (そんなの聞いてないわよ!?)
    『じゃから、止めておけと、言ったんじゃよ・・・・・・・・・・』


    フェンリルは爪先に引っ掛かっている影美の服の切れ端を取り除こうとしていたが、それを取り終えると、再び影美に向き直った。


    『くかかかかかか・・・・・・・・・・どうやら少しばかり遊びがすぎたようだな、ならば今度は、少しばかり本気で行かせてもらうぞ!』


    どうやら、さっきのでまだ全力ではないらしい、さっきのですら、目で追うのがやっとだったというのに。
    死ぬほどマズい、このままではあっという間にあの狼のお腹の中に納められてしまう。


    『『力』を使え、被害がどうとか言ってられる状況ではないぞ・・・・・・・・・・むろん異空間など論外じゃ、障害物がない場所では、まるで勝負にならんぞ』


    影美は体内から剣を召喚、影の『力』を行使する、そしてそれを待っていたかのようにフェンリルが動き出した。
    影美は影を操作し、巨大な壁を作り出す、


    ―――ズドォン!!


    その壁にフェンリルは正面からぶつかる、さらに影美は地面から影を槍状に突き出した。
    ブスリ、ブスリと影の槍はフェンリルの体に食い込んでいく、しかし。


    『くかかかかか、なるほど、これが貴様の能力か、フン、この程度!!』


    フェンリルが体を揺するだけで槍はことごとく破壊された、さらにフェンリルが巨体による一撃を食らわせると、影の壁も一撃で破壊された。


    「なっ・・・・・・・・!!」
    『くかかかかか!!ゆくぞ!!』


    フェンリルが、再度跳びかかってきた。


    『避けろ!!』
    「うわっとっとりゃぁ!!」


    影美は、フェンリルの歯が影美に届く直前で剣先から影の枝を伸ばし、ビルの壁へ突き立て、引きずられるようにして移動、なんとか回避した。
    影美に回避されたフェンリルは、そのまま直進、一軒のコンビニにぶち当たり、それを叩き壊した。


    「・・・・・・・・・・ッ!!」
    『構うな!集中しろ!!』


    コンビニを破壊したフェンリルはすぐさま体を起こし、さらに影美に向かって跳びかかる。
    影美は再び影を伸ばし別の地面へ、それを巻き戻して移動、フェンリルがぶち当たったビルの壁面には大きな穴が空いた。


    「ッ!!これ以上被害を出させてなんていられないよ!!」
    『無茶じゃ!あれを正面から受けとめようとするな!!!』


    無銘刀の静止も聞かず、影美はフェンリルに向き直った。


    『くかかかかかか、なかなか良く避ける、ならばこちらもそろそろ本気で行くとしようか!小娘、やれ!!』
    「『選択』・『風刃スキンゲイル』、解放、『風神刃』、発動」
    「!?」


    いつからいたのか、影美よりは小さな女の子が崩れた瓦礫の上に立ち、言い放った。
    その直後、影美を取り巻くようにいくつものいくつもの風の刃が出現、その数、五百ほど。


    「なっ!!!」
    『あやつにこれほどの力が!?・・・・・・・まさか!』


    影美は、操れる限りの影を全て操り、全てを茨の森のように自分の周辺に展開、風の刃を片っ端から打ち落としていったが、隙間を通り抜けたいくつかの刃が影美の体を斬り裂く。


    「ぐうっ!!」


    肩や足、数カ所に負傷を負ったが、動けないほどではないし、弱音を言ってる暇はない。


    『くかかかかかか・・・・・・・・・・・・・・・!見たか、俺の力を!魔剣を喰らった俺の中にはおよそ八百の魂が眠っている、今の力もまだ俺の力のほんの一部だ!くかかかかかかか!!』


    フェンリルは自信が突き破ったビルの壁から頭を出し、大声で笑った。
    フェンリルが体を揺するたびにビルの一部が崩れ、メキメキときしんでゆく。


    (これ以上、あいつの好きにさせたら、大変なことになる・・・・・・・・・!これ以上好きにさせるわけにはいかない・・・・・・・・・!!)


    「吠え面かかせてあげるわ、この犬っころ!!」


    影美は、傷だらけの体を奮い立たせ、能力を全開に、影を操作する。


    『フン、人間が何をほざいている、その状態でいまさらなに――――ぐおっ!』


    影をフェンリルの足に巻き付け、全力で引っ張った、ビルの壁を突き破って顔を出していたフェンリルはたまらず、落下する。
    さらに影美はフェンリルが体制を整える前に追撃をかける、影を鞭の形に、フェンリルに叩きつける。


    ―――バシィン!


    空中では、さすがに回避することが出来ず、影鞭の直撃を受けるフェンリル、体制を整えようとしていた直後に攻撃を喰らったので、そのまま地面に落下、妙な体勢で地面に叩きつけられた。


    『グオオッ!!グッガッ!この!人間風情が!!!』


    吠えて、起きあがったフェンリルだが、影美の姿はそこにはなく、見失っていた。


    『人間!どこに行った!!』


    ―――ズババババッ!
    ―――バシュッバシュッ!!


    フェンリルが一歩踏み出そうとするよりも早く、地面から無数の影の刃が飛び出す、それらは全てフェンリルの4本の足を、地面に縫いつけるようにして生えていた。


    『グオオオオオオォォォォォ!!!』


    さらに、影美がフェンリルの体の下、そこに生じた影から現れ、真上、フェンリルの腹を全力で斬り裂いた。


    『グオオオオオオオオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーン!!!!!』


    フェンリルの絶叫が響き渡った。

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